……いい香りがする。


リビングの扉を開ける前から香る、いい香りに私の腹の虫が鳴る。


こらこら、腹の虫ちゃん。
そんな食い意地はってるからお腹にお肉ができるんだよ。


かるーく、腹の虫……はーちゃんにお説教してリビングの扉を開けた。



「あら、忍(しのぶ)おはよう」


「おはよう、マイマザー!」



台所でエプロンを着て朝ごはんを作るお母さんに挨拶を返したのだが無視。


ひどいよ、マイマザー……


だけどそんなことはもうとっくの昔に慣れている。


うんうん、とひとりでうなづいているとまたリビングの扉が開いた。



「おはようの豚骨ラーメン!」


「…………」


「無視!? 無視なのか!?」



きっと、私のテンションの高さはこのお方……お父さんのせいだ。


無視をする私とお母さんをみてお父さんは「ぐすん」とひとり泣き真似をしていた。