私が女装を始めた理由は『逃げる』ため。

怖いから、苦しいから、
私は今日も女装する。


胸が、苦しくなって胸あたりを掴む。



『あなた、だれ?』
『あなたなんか知らないわ』


フラッシュバックする。
あの時に戻る。


落ち着かすためにゆっくり深呼吸をする。


大丈夫、落ち着け。

俺はもういない。そう、あのときに死んだんだから。落ち着け。


胸の苦しみがなくなって洗面所を後にしてカバンを持つとそのまま外に出た。



「あっつ…」



夏ってなんでこんなに暑いんだろう。なんて思いながら待ち合わせ場所まで急いだ。