着いた頃はもう遅かったので、葵斗のお母さんが夜ご飯をご馳走してくれた。

テーブルに葵斗とあたしは並んで座り、葵斗の前にはお母さんがいる。

「翔流〜夜ご飯食べるよ〜」

翔流が来たら何を話せばいいんだろ…

私は冷静にそんなことを考えていた。

でも上は静かで降りてくる気配は全くない。

少し安心。


「あら?来ないわね。ま、いっか!それよりほんと綾菜ちゃんに会えて嬉しいわ〜!!」


私は笑顔を見せているけど動揺を隠せない。

あたしの頭の中は翔流のことでいっぱいだった。

それはもちろん悪い意味で。

葵斗の弟が翔流で、翔流は私の元カレで……

しかも翔流は私のトラウマを作った男……


「……ちゃん…綾菜ちゃん?大丈夫?」

葵斗のお母さんが不思議そうな目でこちらを見ている。

「あ…はい。すいません、ちょっと緊張しちゃってて…。」

必死に笑顔を作って答えた。


葵斗は不思議そうに笑っていた。

葵斗のことだからあたしの様子がおかしいことくらい気づいてるはずだ。

心配かけちゃってるかな…?

でもなにがあったのか聞かれても説明できない。