「あたしね、翔流に裏切られたと思ってた。」
あたしはポツリポツリと、話し始めた。
「あの後、あたしは男の人がダメになっちゃったの。怖くなっちゃったの…」
翔流がこっちを見ている。
まっすぐな瞳。
───あの頃、あたしを捉えて離さなかった懐かしい瞳。
「……さっきね、楓に会ったの。」
「楓って…清水…?」
「うん…」
翔流の座っているソファの横まで行き、静かな声で問いかけた。
「楓が言ってたの…。翔流、あたしのこと嫌いになって振ったわけじゃなかったの…?」
翔流の大きな瞳が揺れた。
不自然に下を向いている。
「翔流…なんであの時あたしのこと振ったの…?」
視界がぐらつく。
あたしは今さっき振られたような感覚に陥った。
泣きそうになるのを抑えるのに必死だった。
「翔流のこと信じてたのに…。なのに、なんで…なんで…っ?」