ガチャ

中に入り靴を脱ぐと、リビングから涼しい風と一緒にテレビの音が聞こえてきた。

「あ、おかえり…」

あたしに気づき、翔流が気まずそうに言った。

「ただいま…」

あたしが固まっていると、翔流が話しかけてくれた。

「それにしてもびっくりしたよ。兄貴の彼女が綾菜なんて」

普通に話してはくれているけど目は合わない。

顔も…笑ってない。

「あたしも葵斗の弟が翔流だなんて思わなかったよ」

「卒業した時以来だからもう2年?か」

そう、あの時以来だ。

翔流は何か言いたげな顔をした。

「あー…なぁ綾菜。あの時…さ、ほんとにごめんな。なんつーか、俺…最低だったよな…」

かすれた小さな声だったがちゃんと聞き取れた。

それだけで泣きそうになった。

今だ。

今、真実を翔流に聞かないと。

あたしは声を絞り出した。