「あ、川神さん。」

「椿樹、あ、ごめん。」

「すみません。葬儀の方は、こちらでご親戚の方に連絡を取らせていただきました。
こちらで葬儀は進めるので、あなた達夫婦は来ないようにと。
家は、こっちで売り払う、あと、口座に1億振り込んだから二度と顔を見せるなと伝えろとのことでした。」

「…わざわざ、ありがとうございます。」

「海さんも杏さんもお迎えに来て、それぞれのお家に帰られました。それで、これだけはと、杏さんが亡くなられる間際に言っていた、2人分の結婚指輪、2人のピアスです。では。」

2人が、肌身離さず付けていて、あたしにでさえ、触れさせてくれなかった、ピアスが形見……
外してあるのを見て、改めてパパとママはもういないのだと実感する。
最後にもう一度会いたかった。一目見て、触れて、抱きしめて、離したくない。だけど、そういう訳にもいかないんだ。あたしには、あたしの家族がいるようにパパにはパパの、ママにはママの家族がいる。それを、崩しちゃいけない。よね…?
沢山写真は撮ってあるし。
寂しいけど。今まで、ありがとね。パパ、ママ。約束、天国にあたしと類くんと於兎が行った時に果たそうね。
そう、ポジティブに思わないと。強くならないといけない。目から水が落ちてくる。弱い、痛々しい、妻として、母親として、失格の甘ったれた顔になる。ダメだ。こんなんじゃダメなんだ。

類くんが頭を撫でてくれた。…よし、強くなるっ!!

「佐野さん。ありがとうございました。類くんもありがと。えーっと、山口さん?どうすればいいですか?」

類くんはいつの間にか於兎を連れて、どこかに消えていた。
…類くんのそういうところが好き。

「これに、尿をとってきてもらっていいですか?」

「了解です。」

懐かしいなぁ。於兎の時はママと類くんと3人で来たんだよなぁ。

「これでいいですか?」

「はい!バッチリです!じゃ、またあとで呼ぶので、待合室にてお待ちください。」

於兎を見ていてくれたお礼に、類くんの好きなコーヒー買っていこ。

ピッ ガシャンッ

あと、於兎のお茶。

ピッガシャンッ