凌兄の顔を横目で見る。
伏し目がちで戸惑ってるみたいに見えた。でも彼女をしっかり視界の中に留めていた。

まるで“感動の再会に言葉も出ない”ようだった。


帰って来たのか…?
きっと彼女はどこかに行ってたんだろう。もしかしたら、そこで泣く泣く別れてしまったのかもしれない。

あたし、遊ばれてた…?

彼女がいなくなってしまって、ちょうどお父さんが婚約者だの訳わかんないこと言い出したから、便乗して暇つぶしをしていただけなのかもしれない。

あたしをからかって、遊んでいただけなのかもしれない――



「凌は?」


凌兄を呼び捨てにする人にあたしは初めて出会った。なんて耳障りに聞こえるんだろう…。


彼女はあたしを横目で見て来た。今まで見てこなかったのに。


「……彼女っ?」


ニコッて、凌兄に笑いかける姿がやけに鼻についてムカついてしまった。