夢から醒めた時みたいにはっとして、手を反射的にさっと引っ込めた。
「久しぶり!」
その明るい弾んだ声にびくっとした。あたしは数秒間顔をあげるのに躊躇した。
それでもゆっくりあげて、凌兄の表情を伺った。
…驚いていた。なんで?って感じで。
そして、あたしは見逃さなかったんだ。
凌兄の口元がそっと、動いたのを。
あたしにだって簡単に想像出来た。それは彼女の名前だって。
「もう、そんなに驚かなくてもいいじゃないっ!」
彼女は軽く凌兄の肩を叩いて、人懐っこい笑顔を振り撒く。
なんて可愛い人なんだろう…
ひだまりのようにそこだけ明るく華やく。
「あ…ああ」
「どうしたのよー?感動の再会に声も出ない?笑 なぁーんて、そんなわけないっか!」
凌兄のこんな姿初めてみる。
本当にクールで、あたしの知らない姿。