こんなにも泣きそうになるのは、悲しいときだけではなくて、嬉しいときもだった…。


優しく微笑んでいる凌兄。
いつものあたしなら…何企んでるんだ?と疑うだろう。
今はそんなことないよ。


あたしはホッと、体の力が抜けていくのが分かった。

安心して、心が温かくなってくる。
そういえば今までは指先とか冷たくって、体中が寒かった気がする。



自分の手をぎゅっと握った。
それから開いて…パーにしてそれを横目で確認してから、
差し出されている手へと伸ばす。



もう少しで重なる。
胸がドキドキと高鳴っていく。



あと少し…
あと…少し……





『凌ーっ!』




きっとこれは、あたしが逃げ続けてきたせいなのかもしれない。



ほんの少しの間、夢を見た。…とても幸せな。