土曜日、除雪の済んだ、たくさんの足跡の中を午後の部活へ向かった。

駅へ着くと、

随分と見ていなかった彼の姿がそこにあった。

あ、マスクしてる。

風邪だったのかな?


あれ、こっち向いた?


「スギタ!大丈夫かよー。」

後ろから声がした。

なんだ、私の方見たのかと思った。

スギタ君って言うんだ。

「おう、まぁな。

ばかでも風邪引くらし。」

そういう彼の声は、考えていたより少しハスキーだった。

二人の微笑ましい会話を盗み聞きしていたら、チラリとスギタ君がこちらを見た気がした。

気のせいかもしれないけど。

でも、確かに、今は“私”を見た気がした。

盗み聞きしていたのがバレたのかな、恥ずかしい。

それでも、ほんの一瞬目が合っただけで、

私の心はびっくりするほど満たされて、

今にもスキップをしたい気分だった。