あ、お礼言いたかったのに!

「あ、あの!


ありがとうございます!」

後ろを振り返って、ニッコリと笑って、

「いえ、あんた軽かったし、全然大丈夫っすよ。」

それじゃなくて。

「そうじゃなくて。

いつもあなたの足跡に助けられてて!」

最初は歩きやすくて助かっただけだった。

だけど、今は足跡があるだけで心まで満たされて。

ただ早くて眠いだけだった朝が彩られた。

「ふはは、いーえ。

あ、先週大丈夫だった?」

「大変でした。」

「ごめんごめん。」

ついこの間までただ足跡を追ってただけだったのに、今こうして話していることが不思議だった。

「おっと、遅れるな。急ぐぞっ...えっと、名前なんていうんすか?」

名前を呼ぼうとしたら、わからなかったらしい。

「杉山奈乃です!」

「奈乃さんか。じゃ、行きますよ。」

また、彼がつけた足跡の上を追っていった。