「朱色の…」
今更か。まぁ、部屋が薄暗かったおかげで髪が赤っぽいのも、左目が真っ赤なことにも気づかれなかったんだけどね。
爪を腕に立てる。簡単に傷がついたそこから、赤が染み出してくる。
「そして、さようなら、枦の組長さん」
「ッ!?」
声をあげようとしたその口に傷つけた腕を押し付ける。
「っうが!?」
「ッ…」
激痛が走るけど、そんなの気にしてらんない。おっさんの呻き声1つ廊下にいる奴らに聞かれれば終わりだ。
しばらく抵抗を続けたおっさんだけど、徐々に白目向いて、完全に息絶えたのを確認してから腕を離す。
うわ、ひっどい歯形…。見てるだけでも気持ち悪い。
さてと…。どこまで踏み込んでるんだろ。
このままここで待つなんて甘いこと言ってらんないしなぁ…。
「組長!!急いでください!!!」
おお。気付かれてないとか最高。
噛まれた方の袖を裂いて肩のとこまで腕をむき出しにする。
噛まれた跡から流れる赤で左手を染め上げる。後処理大変そうだけど、そんな悠長なこと言ってらんない。
まぁ、赤は血が乾いたら死んじゃうから大丈夫でしょ。
呼吸を整えて、ベッドのギリギリ端で構える。
外にいる奴らも殺る。遠慮すれば、こっちが死ぬ。応援なんか待ってる場合じゃない。