街は危うい夜の色に染まる。

そんな中、少しうつむきながら歩く。

家出して、途方にくれた女子高生のように。行く宛もなくさ迷ってるように。

街の喧騒は流れていく。悲痛な声も楽しげな声も全部全部通りすぎていく。

何時間、経っただろうか。街は完全に夜に染まり、危うい臭いを漂わせる。

「こんな時間にどうした?」

顔を上げる。そこには、心配そうな顔で私を見下ろす20歳くらいの男性。

視線を地面に落とす。ぎゅっと下唇を噛む。

「家に帰らないのか?」

「…い、家出したの」

「そうなの?でも、ここは危ないよ」

「…」

黙り込む。

化かし合いとはよく言ったものだ。お互いに考えていることはあるのに、それは出さず、表面を繕う。

でもね、読まれるわけにはいかない。潜入しなければ意味がないんだから。