そこに放り込まれた瞬間、ドアが閉まる。
部屋はそんなに広くない。だけど、部屋の中央にぽつんと置かれたダブルベッドが妙に気色悪い。
そして、部屋には先客がいる。
20代くらいの男がベッドの端に腰かけてうなだれている。ゆるゆると顔を上げた男と視線が交わる。
「…キミが、朱って呼ばれてる子?」
「…」
黙って頷く。男はため息と共に立ち上がる。歩み寄ってきた男は、私の手首をつかむとベッドへ連れていく。
「キミを抱かなきゃいけない。ごめんね」
「…」
「本当はこんなことしたくないけど、やらなきゃ、俺帰らせてもらえないんだ」
多分、この人は本当に何も知らないままここに連れてこられたんだ。
あの研究者に選ばれただけなのに。
押し倒される。男は嫌そうな顔を崩さない。
「ごめんね。すぐ終わらせるから」
男は言葉通りに実行した。迷いはなかったし、こちらを気遣う素振りはまるでなかった。
少しくらい心配してくれてもいいと思う。
こんなに嫌々触られたのは初めてだ。
男は与えられたことをこなすと、すぐに部屋を出された。ドアが閉じる寸前、男は白衣のやつから封筒を手渡されていた。