「朱、付き合ってくれるんだよね?」
「…」
「朱とおしゃべりできるようになるなんて思ってなかったなぁ。それに、随分強くなって、僕ちょっと感激だよー」
鍵が開けられる。鉄格子の一部分、扉になっている場所が開く。
足につけられた枷を外され、首についた枷の鎖を取り替えられる。
引っ張られるままに鉄格子の外に出る。でも、すぐに両手を後ろ手に拘束された。
「僕が言うことを聞いたんだ。今度は朱の番だよね?」
「…」
「朱はいい子だね~。子どもの時からそう。僕を楽しませてくれる。朱が華月に取られて僕がどれだけ落胆したか、分かる?そりゃもう食事も喉に通らなくてね~」
ごちゃごちゃ勝手に話始める研究者の話は聞き流す。
つれていかれる直前、向かえ側のご老人がなぜだと言わんばかりの目で見つめてきたから笑って見せた。
これは、私が望んだから今があるんだ。
目的は果たす。だけど、その過程で今以上の犠牲を出したくないんだ。