研究者は牢の前から離れていく。

だけど、短い悲鳴と、鍵を開ける音が聞こえる。

「っうわぁぁああん!!」

「っお願いします!子どもだけはっ!!」

ッ!?さっきまで泣いてた子どもなの?

声はすぐ近くでする。親の悲痛な叫びも無視させれているのか、子どもの泣き叫ぶ声は止まない。

…このままじゃ、何も知らない子どもがあいつの餌食になってしまう。

何も知らないで、もし捕らえられなければ普通に生きていけていたはずの子どもが…。

…見捨てるなんて、出来ないよ。

「待って!!!」

無理矢理身を起こす。鉄格子を殴れば研究者が振り返る。その手には泣いている5歳くらいの子ども。

研究者はにっこりと笑う。その顔さえ恐怖を誘うには十分だ。

「なーんだ。朱、起きてたの」

「子どもを離して。朱色の悪魔の実験なら私がすべて引き受ける。だから、ここにいる誰にも実験するな」

「えぇ。それは無理だなー。だって朱は成功例なんだし。朱には新薬の投与は出来ないでしょうに」

「だからって、てめぇが弄んでいい命なんてどこにもねぇんだよ!!!」

「…はぁ、分かりました。朱のご機嫌を損ねることはしたくないしねー。よし分かった。子どもには実験はしないよ。朱、子ども好きみたいだしね」

めんどくさそうに返事をした研究者はまた牢を開けて、子どもをそこへ放り込む。

そして、鍵をくるくる回しながら私の前までやって来た。