「お嬢さん、野暮なことを聞くがキミは何の実験を」

ご老人が尋ねてきたその瞬間、廊下に響いたのは子どもの泣き声だ。

甲高く泣き叫ぶその声は心を逆撫でる。

妙に焦りと苛立ちが沸き上がってくる。

子どもの泣き声を打ち消すようになにかを殴り付ける音が聞こえてくる。

「っうるせぇんだよ!!!黙らせろ!!!」

直後響いたのは男の声。その声に助長されるように子どもの泣き叫ぶ声は増して、頭を揺らがす。

ガンガンと鉄格子を殴り付ける音、男の罵声、子どもの泣き叫ぶ声。

重なりあったその音は心を揺さぶる。両耳を塞ぎ、うつむく。

落ち着け。大丈夫だから、落ち着け…。

目を閉じてその場にうずくまるように身を固くして、まるで地蔵か何かにでもなったかのように固まり続けた。

その時、ガチャンと妙に響く音が聞こえてくる。

その音が聞こえた瞬間、それまで泣いていた子どもも、騒いでいた男も急に黙り込む。

「お嬢さん、寝たふりをしなさいな」

「ッ…」

ご老人の微かな声に慌てて身を横たえる。