「嬢ちゃんは、あのときの生き残りか?」
びっくりした…。いきなり声をかけてきたのは正面にいるご老人のようだ。
そちらに体ごと正面に向けると、ご老人はどこか憐れむ目で見つめてくる。
「まだ子どもだっただろうに」
「…どうして分かったんですか?」
「ここを知っているような態度で恐れた目をしていないからね…。キミはまるで研究者たちに一矢報いるかのような果敢な目をしとる」
この人、結構すごいのかも…。
微笑むとご老人はまた悲しそうな目をして、私のいる牢から数個離れた牢に視線を向ける。
「あんな幼い子まで…」
「また拐ってきたんでしょうか」
「あれは、親のどちらかが被検体だったのだろう。家族もろとも拐われたか…」
「ッ!?そんな」
「だが、奴らの考えそうなことだ。家族もろとも拐えば、夜逃げと思われるやもしれん」
「…」
それだけの理由で、子どもも…。いや、彼らのことを考えそうなことだ。
全く関係ない子どもを拐うリスクに比べれば家族もろとも拐えば、余計なリスクは背負わなくて済む。
それに、家族を拐えば、男性と女性が一気に手に入る。実験のための命を生ませることだってできる。
外道どもが…。
手を握る。あいつらの思い通りになんかさせてたまるか。