「…私は、朱色の悪魔なの。…だから、大事な人とはしないの」
「…」
「退いて」
このまま続けて、もし、もし弟くんが私の中の悪魔に触れて、死んでしまったら…。
私は…華月朱音は、耐えきれない。
人として、…ううん。人とあろうとする朱音は、崩壊する。
だから、嫌、なんだ…。
しばらく、弟くんは無言だった。なにもせず、動きを止めた状態のままだった。
…でも。弟くんは、手を動かした。私を快楽に溺れされる手を…。
「魁っん!?」
突然口を塞がれる。じたばた仕掛けてやめた。されるがまま、弟くんが満足して離すのを待つ。
しばらくして離れた弟くんの目は熱に浮かされたような、求めてる目だった。
「そんな理由なら、やめねぇよ」
「っ…」
弟くんの手が服の中に消える。直接触れられる手に慌てて口を塞ぐ。
「朱音、よく考えろ。もし、お前をやったら死ぬんなら、なんであのくそじじいは1週間も生きてこれた?」
「っあふ…」
「お前の赤は、確かにお前の中にある」
服の中を荒らしていた手は引き出されて、顔の輪郭をなぞり、指は口に入る。
「ん…」
「でもな、それは正真正銘、血の中にしかいないんだよ。だから」
口の中を荒らした指は、銀色の糸を引いて、弟くんの口の中に消える。
「お前のすべてが毒されてる訳じゃねぇ」
弟くんはニヤリと初めて笑った。
その顔は支配者の顔。自分の手に入れたいものを、自由にできると確信している顔だ。