「だって本当に連れてきてくれるとは思っていませんでしたから」

言いながらも、環は本当に嬉しそうだった。

アイドルだからという理由で、特定の男性とデートの経験などない。

『偶像は全てのファンの所有物』というのが建前だ。

なかなか恋愛もできない。

本当にこれが、初めてのデートらしいデートだった。

とはいえ、刑事とアイドル。

お互いに多忙を極める。

クリスマスイヴの今夜くらいと思って時間を作った巽だったが、そろそろ帰らなければならない。