とはいえ、この日も患者数はまばら。

深夜まで診療所を開いている必要もない。

「今日は、おーしまいっと」

早々に診療所を閉め、美奈は白衣を脱ぎ捨てた。

いつもの赤いワンピースの上に、上着を一枚羽織る。

1人で街に繰り出すのは、些か敗北感漂うが、道行くカップルを恐れて診療所に引き籠もるのは更に敗北感漂う。

「こうなったら、ちょっとお高めのスイーツの店行って、高級ケーキ食べちゃうんだからっ!」

まぁ、要はやけ食いである。

そうはいっても、店に行けば『お一人様』の女性が大勢いて、案外自分ばかりが孤独なのではないと実感できるのだが。