クリスマスイヴまであと僅かと迫った。

店先にはクリスマスツリーやリースが華やかに彩られ、サンタルックの宅配ピザ屋が忙しそうに街を行き交う。

「な~の~にっ!」

聴診器片手に、美奈は毒を吐いた。

「私は何で今年も1人寂しく診療所で仕事してなきゃいけないのっ?ねぇどう思う柏木のお爺ちゃん!」

そんな事言われても、とばっちり以外の何物でもない柏木のお爺ちゃんである。

「まぁ美奈ちゃん、そう言わないで。そこいらの若いもんみたいに、クリスマスだ何だで軽々しく仕事休まない美奈ちゃんのお陰で、わしらは長生きできとるんだから」

「そーお?そう思ってくれる?」

拗ねたように呟く美奈。