「おい、マジ大丈夫か?」



近寄って様子を伺う男をあたしはキッと睨みつけた。



「近寄らないでっ!」



故意じゃなくても、これは彼らが招いた事態に変わりない。


心配する資格もない。


……許さない。





「はぁ……っ……」



最初は荒かった隼人の呼吸が、落ち着いてきた。


出血もハンカチで抑えていると徐々に収まってくる。


あんな所からの落下にしては、軽傷で済んだのかもしれないとホッ胸をなでおろす。



「右腕、動くか?」



真っ先に腕の心配をした凌空に、心臓がヒヤッとした。


大事な右腕。


それが一番心配……。


恐る恐る右腕を上げて、ゆっくり肩を回す隼人から安堵の笑みが漏れた。



「ああ、動く。他も問題ない」



体中は痛いはずなのに、右腕が動くことですべての痛みが飛んだように。


隼人もそれが一番心配だったよね……。



「はあっ……よかった」



あたしは優しく右腕をさすった。


右腕は、隼人の命と同じくらい大切なモノだもん。


右腕が傷つかなくて、ほんとに良かった……。



それを見て、少し落ち着いた様子の花音ちゃんがようやく口を開いた。



「晃……なんでこんなこと……」


「だって……花音が」


「あたしここまで頼んでない!ただ、桜宮の野球部に情報を流してくれれば良かっただけなのに!」


「花音……」



花音ちゃんに睨まれた海道くんは、言葉を失くす。