それでもあたしと凌空は、泣きさけぶ花音ちゃんの横、無我夢中で体中に乗せられた鉄パイプをどかして行く。
放心してる暇も泣いてる暇もない。
早く助けなきゃ……!!
「救急車、救急車呼んで!」
手を動かしながら叫んでも、花音ちゃんはその場から動く気配もなく、あたしは震える手でスマホを握り締め119番に繋いだ。
「事故ですか、救急ですか」
そう呼びかける声に、あたしはなんて言葉を発したかわからない。
ここがどこなのかもわからない。
それでもスマホから居場所を検知したのか
「すぐに向かいます」
確かにそう聞こえたことに安心して、スマホが手から滑り落ちた。
その間も凌空は必死に作業を続け、体の上に乗せられていた鉄パイプはすべて取り除かれた。
凌空は隼人の体の下に手を入れ、上半身を支える。
幸いにも意識はしっかりしているようで、「うっ」と声を漏らしながら隼人は顔を歪めていた。
「隼人、しっかり」
あたしも頭の方に回り込み、体に手を添えたとき。
「おい、なんだよ……これ」
べつの声が聞こえた。
顔をあげると、そこには海道くんを含めた数人の高校生がいた。
海道くん以外は、知らない高校の制服を着ている。
「てめえっ……!」
隼人の体を抱えながら、凌空が大声で叫ぶ。
「俺達はなにもしてねえぞ……なあ」
「あ、ああ……」
この惨状は予測していなかったのか、全員強張っていた。