さっき教室で、隼人にもスコアブックが見つかってしまったこと。


桜宮野球部に情報を横流しするために、凌空から色んな情報を聞き出し、投手ファイルの存在とそれが部室にあることも凌空から聞き、盗んだこと。


凌空はそれらの紛失を知らない。


凌空のせいにさせないように、隼人はあえてひとりで海道くんからファイルを取り返そうと向かったみたい。


隼人がどこからか見つけてきたふりをすれば、紛失なんてなかったことになり。

凌空が批難にさらされることもなくなる。


……だから、ひとりで解決しようと思っていたんだ。



バスの中で、凌空は必死に怒りを抑えていた。


花音ちゃんに部内のことを話してしまった後悔もあったかもしれない。



『花音ちゃんひどいよ!』



代わりにあたしが責めたてた。


花音ちゃんと野球の話が一緒に出来るのを、すごくうれしそうに話してくれた凌空の顔を思い出して。

尚更……許せなかった。



花音ちゃんは涙し、あたしはバスの乗客から批難の目を浴びたけど。


それでも、あたしは抑えられなかったんだ。