……は?なに言ってんだよ。
……凌空とつきあってんだろ?
「あたしじゃ……ダメ?」
震えるように訴えかける声に、ハッとして体を離す。
揺れる黒髪を耳に掛けた彼女は、俺を見つめながらもう一度同じ言葉を唱えた。
「あたしは……ずっと矢澤くんだけが好きだった」
「なに言って……。だって、凌空と……」
頭の中はパニックだ。
凌空に告白したのは手塚からだろ……?
俺はからかわれてんのか?
整理の出来ない頭と心をどうにか落ち着かせようとすると、耳を疑うような言葉が聞こえた。
「……凌空くんのことは、はじめから好きじゃない」
目を見張る。
「じゃあ……なんで……凌空と付き合ってんだよ……」
「……結良ちゃんが悪いんだよ……」
「……!?」
突然出てきた結良の名前に、頭が真っ白になった。
「矢澤くんと付き合ってるくせに、凌空くんまで欲しがるからっ……」
なに……言ってんだ……?
「それに……結良ちゃんは矢澤くんを好きなようには見えなかった……」
「……」
「だから矢澤くんも全然幸せそうじゃなくて。そんな矢澤くんを見るたび胸が痛かった。凌空くんが転入してきて、結良ちゃんの気持ちがフラフラしてるがわかって尚更」
指摘されたくなことを次から次へと言ってのける手塚に、俺が割り込む隙なんてなくて。
黙ってるのをいいことに、話し続ける。
「あたしはこんなに矢澤くんが好きなのに、矢澤くんに思われてる結良ちゃんが矢澤くんを見てない……それが許せなかったの」
時折、唇を噛みしめながら。
「結良ちゃんには、なんでもわかり合える親友もいて、矢澤くんもいる。なのに凌空くんまで……だから、結良ちゃんのもの、全部奪いたくなった……」
恐ろしい手塚の思惑に、背筋が凍る。