うっすら涙の膜が張った顔を上げて礼治さんを見る。少し困ったように顔を傾けてあたしを覗きこんでいた礼治さんと目が合うと、礼治さんはふっとわらって視線を逸らせた。


「……俺はね、結婚しているから、その気持ちに応えられない」

「…………写真集の、人? 」

「そう。あの写真集が賞を取ることが出来て、やっと世間的に認めてもらえたから結婚したんだよ」


そんなの、わかってた。

礼治さんがカメラの向こうから送っていた視線はとても熱くて、優しくて……

あたしもそんな風に思われたかった。


礼治さんを見上げていたら、涙がこぼれた。熱い涙は鼻から喉にまで流れてきて、胸がいっぱいになる。


「……ごめんね」


涙を親指で拭ってくれるけれど、それだけでは間に合わないくらい涙が溢れてくる。

だって10年分なんだから。

好きで、好きで。


この想いは憧れなのか、好きなのかずっと悩んで迷ってここまで来たんだから。この想いをずっと誰かに伝えたかった。