こんなに頑張らないと生きていけないなんて、生きるのって大変だ。

 ここで辛いからと顔を背けてしまったら、もう顔なんてあげられない。頑張ってほしい、でもこんなに辛いなんて。

 先のわからない迷宮に迷いこんだみたいに答えなんて見えない。あたし達にできるのは、そばにいて見守っているだけだ。

 反対側にはおばあちゃんもいて、お父さんや叔父さん叔母さんも来ていた。遠くに転勤して働いているいとこはまだ来ていなかった。みんなが息をひそめているので、機械の動く音だけがやけに響く。






 ずっと長くて時が止まってしまったような時間を破ったのは、診察に来た医師だった。

 心音と瞳孔を確認して、ちらりと腕時計に視線を投げる。ゆっくりひとことひとことを区切るように告げられる。


「6時55分、ご臨終です」


 うわっと部屋にいた全員が声を漏らす。泣き崩れるおかーさんをお父さんが支えて部屋から椅子のある場所へと連れていく。叔父さんは足早に部屋から出て行き、どこかへ電話をかけていた。残ったおばあちゃんを叔母さんが励まして、呆然とするあたし達孫へも声をかけてくれる。