人工呼吸器とシリンダー型の点滴で埋め尽くされた部屋はかなり広いものであったけれど、椅子を置くようなスペースはなく、おじいちゃんの側まで行ってかがみこんだ。

 喉の傷が表面的には良くなっていても、おじいちゃんはご飯を食べることができなかった。ずっとずっと点滴で。

 食べることが大好きだったのに、ずうっと食べることが出来なくて痩せてしまった。


「………おじいちゃん、玲奈だよ。おねーちゃんも居るよ」

「おじいちゃん、優奈よ。今来たからね」


 痩せた顔にかかっている人工呼吸器のマスクは大きくて、呼吸も苦しげだ。それでもおじいちゃんは、あたしとおねーちゃんがわかったんだと思いたい。



 声を掛けてから、おじいちゃんの目に涙が浮かんだからだ。力なく、重たい頭を動かして頷いてくれた気がする。


「……………おじいちゃん」


 ぶわっと涙が溢れた。おじいちゃんが頑張っているんたから、泣いたりしちゃいけないとわかっていても、こんなに頑張っているのを見たら、楽になって欲しくなった。