タクシーを降りて、夜間入り口から七階までエレベーターで昇る。


 おねーちゃんもあたしも、何か言ったら不安で気が狂っておかしくなってしまいそうで、唇
を噛み締めていた。それでもぎゅつと噛み締めた唇が震えて嗚咽が漏れてしまいそうだった。


 たまらなく不安だった。


 今日が最後だったなら、もっと会いにくればよかった。たくさん話をして、おじいちゃんの話を聞きたかった。



 集中治療室からおじいちゃんはナースステーション前の個室に移動していた。いつでもすぐに駆けつけられるように、ナースステーションの前の個室は重病人なのだ。

 看護士さんが何人も部屋にいて、おじいちゃんのために最善をつくしてくれていた。おじいちゃんはたくさんの点滴と生体情報モニターと人工呼吸器に繋がれていた。

 身動きなんて出来ないくらい、息苦しくて密度の濃い空気がそこにはあった。


「おかーさん! お父さん! おじいちゃんは……」

「優奈、玲奈おじいちゃんのそばにおいで。おじいちゃん、優奈と玲奈が来たから」