だからある程度のことは打ち明けなければ、あの頑固な奴は首を縦に振らないだろう。それは仕方のないことだが、口の固い奴なのでそのあたりのことは安心だ。

 指定していた待ち合わせ場所に、そいつは座っていた。適当な店がないからと言って呼びつけたコーヒーショップのスツールから、がっちりした体がはみ出している。

 たまたま席が空いていなかったからか、待ち合わせだからか入り口にほど近い窓際に熊の置物よろしく座っている。


「よお、待たせたな」

「遅い。どれだけ僕が待ったと思うんだ」

 
 じろりとスツールに座ったまま睨んでくる。


「奢るから飲みに付き合えよ。ここでする話じゃないんでね」

「いつまでもこんなところじゃ耐えられる訳ないだろ? 僕を見て店に入るのを止めた子だっていたんだ」

「それはそれはご愁傷様」


 悪友は、形こそデカいがその性格は穏やかで温厚なので、自分を見て怖がった人がいたことに酷くショックを受けている。そんな奴も不器用ながらも彼女がいるのだから、神様は見捨ててなんかいないんだな。

 河岸を変えようと、ここからほど近い居酒屋に移り席に落ち着く。