岡本クンはぼそっと呟いただけなのに、その言葉はまるで耳元でささやかれているように聞こえた。


 教室を出て廊下を歩きながら、岡本クンに言われた言葉だけがぐるぐると頭の中を渦巻く。


 ただ黒沢を呼びに行くだけ、なんてもう思えない。


 自分の命、黒沢の命、その二つを天秤にかけさせられているように感じる。


 気づけば男子トイレの前で棒立ちになっていた。


 ここで守を教室に連れて行けば、何事もなく終わるだろう。


 真人の身は安全。


 だけど、守は……。


 守はもちろん”死ね”なんて言っていない。


 でもそれを証明するものなんて何もないのだ。