中谷サンは全く関わりのない人だったが、それでも真人は同じように緊張したし同じように怯えた。


 しかし岡本クンの次の言葉で、真人の震えは限度を超す。





「あと、黒沢」




 黒沢。


 それはクラスにも学校にもひとりしかいない。


 黒沢守。


 デブでチビで気が弱くて、でも優しいあいつがどうして”死ね”なんて言葉を言えようか。


 なのに名前をあげられた。


 これではっきりした。


 岡本クンは山本咲良のかたきがうちたいわけじゃない。


 ただ自分の殺したい人を、殺しているだけだ。


 自分の手を汚さずに人殺しができる。

  
 小林は”殺人の敵討ち”と言っているが、新たな人殺しの手伝いをしていることに気づいているのだろうか。