一時間目、社会の時間。


 五十分の授業があと少しで終わるというところだった。


「先生」


 守が手を挙げたのだ。


「ん? どうしたの?」


 学校では美人として通っている社会の先生が守に尋ねる。


「……トイレに行ってきていいですか?」


 守の顔を見るとそれはもう真っ青で、かなり我慢していたことがわかる。


 一刻の猶予もないのだろう。


 だから、あと少しで授業が終わるというのに、恥をしのんで守は手を挙げたのだ。


 それなのに先生は、


「それ、今すぐ? 授業終わるまで我慢できない?」


 と悠長なことを聞いている。