1歩足を踏み入れると、これまで騒がしかった会場が一気に静まりかえった。

客の視線が自分に集まるのを感じる。

(注目されるのって、なれてないな。)

パニックにこそならないが、焦っているのに変わりはない。

さてどうしたものかと思い悩んでいると、

「あぁ、我が愛しの姫。遅かったね?」

急に響き渡る聞き覚えのある声。

(ルキ様!)

コツコツと靴をならしながらこちらへ歩いてくるのは間違いなくルキ王子だ。

アリアのちょうど目の前で立ち止まるとスッと手を持ち上げられ、ちゅっと音を立てて口づけられる。

「きゃぁぁぁ!」
「いやー!!」
「ルキ様ぁぁぁ!」

周りの女性たちの悲鳴も王子はどこ吹く風。


きっとこの人たちは王子の花嫁という立場を狙ってこのパーティーに参加したのだろう。

「私の愛しい人。疲れてはいけない。あっちへ行こう。」

さりげなく腰を抱かれ、前へ前へとエスコートされる。

そこでまた女性たちの悲鳴。

「やれやれ。うるさいなぁ。悲鳴なら愛しい君のだけがいいよ。」

小声でこっそりつげられる甘いセリフ。

(またこの人は・・・。)

「そのドレスよく似合ってる。俺が選んだんだ。」

確かに、少し過剰な露出や薄い生地はこの人らしいと納得してしまう。

「・・・ありがとうございます。」