その部屋は他の部屋に比べてシンプルだった。

その部屋のなかで一際存在感を放っている青年が1人。

即座に顔を伏せ、頭をたれる。

「よく来たな、アリア。」

いきなり呼び捨てとは、さすが王子様だ。
それに親しげで、まるで会ったことがあるかのような口ぶりだ。


「お呼びいただき光栄ですルキ王子様。」


ドレスの裾をつまみ、ふわりと持ち上げて作り笑いを浮かべる。

他者から見れば、花がほころぶような可憐で愛らしい微笑みだろうが、当の本人にその自覚は全くない。

「ルキと呼んでくれ、アリア。」

(この人は何をいっているの?)

王子を呼び捨てにするなど、聞いたことがない。


「では、ルキ様と呼ばせていただきます。」

「まぁ、今はそれで良いだろう。」


王子はそれが気に入らないようだったが、渋々受け入れたようだ。