「オレ、月見さんに感謝してるんですよ。」
福田は真っ直ぐな瞳で俺に言った
「感謝って…?俺は何もしてないけど」
感謝される理由は分かっていた…だけど、俺は分からない振りをした
「月見さんが松岡組を倒してくれたおかげで…マッチェルボさんと親父は松岡組から解放されたんです…」
「逮捕されたんだろ?本当にそれで良かったのかよ…」
実は、福田の本当の目的は、マッチェルボ山口のかたきで、俺に復讐するとかじゃないだろうか…
あり得ない考えに俺の心は揺れていたが、
福田の嘘、偽りのない真っ直ぐな目を見て、その心の揺れは、電車の揺れに逆らうかのようにして止まった。
「良いんです…松岡組さえいなくなれば…だから…」
「オレは月見さんに全力で協力します!!」
「あぁ、頼りにしてるよ。」
「月見さん…駅に着くまで、少し寝ていいですか?」
朝の6時からずっと、駅で待っててくれたんだから、眠たいはずだ…
「寝ろよ。駅に着いたら起こしてやるから。」
「ありがとうございます。」
すると福田は首をガクッとさせて一瞬で眠りについた。
(寝るの早っ…)
(あっそうだ!!クラスの女子に電話して謝らないと!!)
俺は携帯を出してクラスの女子に電話した。
『プップップッ』
『ただいま電波の届かない……プツ』
俺の携帯は圏外だった…
クラスの女子たちも電車に乗っているから、圏外だろう…
(俺は圏外で…むこうも圏外…)
俺とクラスの女子は、もう『圏外』な関係だ…