「オレが初めてあの人に会った時、マッチェルボさんは、まだ松岡組には入っていませんでした…」
「その時はマッチェルボ山口は、ただの情報屋だったのか?」
「えぇ、そうです。裏ピンク通りでは有名な情報屋ですよ。」
「どうしてそんな奴が松岡組に入ったんだよ…」
「それは………」
俺は福田の表情が少し暗くなったのを、なんとなく感じとった
「家出をして、行くあてもないオレをマッチェルボさんは拾ってくれた…」
「そして情報のテクニックを教えてくれた…オレにとっては本当に兄のような存在でした。」
(俺がマッチェルボ山口と闘った時はただのキ〇ガイだったのに…)
「優しくて…頭が良くて…カリスマ性があった。でもあの人は松岡組に入って変わってしまったんです…」
「オレが家出をして2ヵ月が経ったころ…マッチェルボさんの家に住んでいるのが、親父にバレてしまったんです。」
「怒った親父は当然オレを殴りました…そしてマッチェルボさんも…」
「マッチェルボさんは親父にケジメをつけろと言われて、指を落とすか松岡組に入るかという苦渋の選択を迫られました…」
「マッチェルボさんは昔からヤクザを嫌っていました…」
「だから自分がヤクザになるということはプライドが許さなかった。」
「…しかしパソコンを自由に操る情報屋にとって指を落とすということは、死に値する…」
「そしてマッチェルボさんは松岡組に入ったんです」
「オレのせいで…」
電車の揺れのせいじゃない…
確かに福田の手は震えていた…