市口 咲彩(いちぐち さあや)。
パッと見は大人しそうに見られるけど、蘭や虎ちゃんに言わせると違うみたいで隠れ陽キャラだと言われる。
高すぎず低すぎずの身長に、ぽっちゃりでもスタイルが良いわけでもない至って平凡な私。
蘭は可愛いって言うけど、笑った時に出来るエクボが唯一のコンプレックス。
小学生の時、イジワルな男子に『お前の顔、落とし穴あるじゃん!』とからかわれたことは、なかったことにしたい過去。
長い前髪を右サイドに流して耳にかけ、耳には小さなハート型のピアスを付けてる。
最近の楽しみは、背中まで伸びたストレートの黒髪のヘアアレンジ。
シュシュでひとつに結んだり、お団子にしたり、時には下ろして巻いてみたり。
雑誌を見て毎日研究してるんだ。
オシャレっ気がなかった私だけど、武富君と同じクラスになってから蘭にメイクを習うようになった。
少しでも可愛いと思ってもらいたいから、苦手な早起きを頑張ってヘアアレンジやメイクに励んでいる。
恋のパワーってホントにすごい。
今まで苦痛だった早起きが難なく出来るんだもん。
むしろ、それが楽しくて仕方ないんだもん。
「なにニヤけてんだよ?」
「え?」
机に頬杖をつきながら、虎ちゃんが変な目で私を見る。
わ、私ったら。
無意識の内にニヤけちゃってたの?
「ニ、ニヤけてないから。虎ちゃんの見間違いじゃない?」
顔の筋肉に力を入れて、緩んでいた頬を元に戻す。