「でも、まだ1冊しか読めてないんだけどね」



「いやー、1冊でもすごいよ。市口さんって、やれば出来る子なんだ」



「え?そ、そう……かな?」



やれば出来る子?


褒めてくれてるのかな?


だったら嬉しい。


でも、お世辞抜きでホントに面白かった。


夢中になって読んじゃったくらいだし、意外と推理小説ってハマる。


おかげで今日は寝不足。


目の下にクマとか出来てたらやだな。


目も充血してないかな?



それにしても……私の名前知っててくれたんだ?


絶対に知られていないと思ってたのに。



ヤバい。


嬉しいことが多すぎる。


ヤバいヤバい。


自然と頬が緩んだ。



「どうしたの?」



ニヤける私に首を傾げる武富君。



「私の名前……知っててくれたのが嬉しくて」



他にも色々嬉しいけど、名前が1番嬉しかった。



「え?クラスメイトだし、一応みんなの名前は把握してるよ」



クスッと笑うと、武富君はカバンの中から何かを取り出した。