学校に着いたら武富君はすでに来ていて、いつものように小説を読んでいた。
サラサラの黒髪と、キリッとした横顔に思わずドキッとする。
あー。
やっぱりカッコ良い。
好きだなって強く思う。
邪魔しちゃいけないと思ってそっと後ろを通り過ぎようとすると、本に向けていた顔がゆっくりこっちを向いた。
「市口さん、おはよう」
弧を描いてクシャと細まった優しい瞳。
武富君の笑顔は、私の心臓を一瞬で壊すほどの破壊力を持っている。
「あ、う、うん……っ!おはよう」
ヤバい。
顔、赤くないかな。
すっごい熱いんだけど。
武富君を前にすると、ドキドキして落ち着かない。
何か……何か話さなきゃ……っ!
話題……!
「あ……昨日教えてもらった小説読んだよ!すっごい面白くて、つい遅くまで読んじゃった」
「マジ?早速読んだんだ?」
「う、うんっ」
武富君がオススメしてくれたから。