「でも、ホントにいいの?迷惑じゃない?」



「ううん、全然だよ。市口さん、困ったような顔してたしね」



無邪気に笑う織田さん。


だけどなんだか空元気のように思えて、ムリをしているように見えた。



「どうかしたの?何かあった?」



そんな顔をされたら、嫌でも気になっちゃうよ。


武富君のことで、織田さんも傷付いているのかな。



「……ううん、なんでもないよ!ごめんね。行こう」



織田さんはぎこちない笑みを浮かべて足を速めた。


トボトボと織田さんの後を追う。


なんでもなくないでしょ。


明らかにツラそうだもん。


でも、私が首を突っ込んでいい問題じゃないのは明白。


2人のことなんだから、放っておけばいい。



「バスだから少し面倒だけど、降りたらすぐだから」



バス停に着くとすぐにバスがやって来た。


2人で並んで座り、窓の外に目をやる。



10分ほどバスに揺られたあと、住宅街の中にある停留所でバスを降りた。


小さなスーパーが目の前にあって、必要な材料を買う。


そして、スーパーのすぐ向かいにあった織田さんの家にお邪魔した。