「おい、ムシすんな」
虎ちゃんの鋭い視線をひしひし感じる。
「だ、だって。いきなり何を言い出すのかと思えば……」
そんなの……ムリだよ。
「咲彩がツラそうにしてるからだろ。目も真っ赤だし、泣いてたのバレバレな。伝えたらスッキリするかもしんねーじゃん」
「…………」
あ、バレてたんだ。
やっぱり虎ちゃんにはなんでもお見通しなんだね。
……伝えたらスッキリするのかな?
諦めることが出来る?
なにかが変わるの?
「俺……咲彩が伝えるまでいつまでも待ってるから」
「…………」
わかってる。
伝えた方が良いってことは。
このままじゃ苦しくて、ズルズル引きずるだけだ。
でもーー。
色んな想いが邪魔をする。
だけど、真剣にぶつかってくれてる虎ちゃんを真っ向から否定することは出来なくて。
結局私は、だんまりを決め込んだのだった。