虎ちゃんが選んだのは、いつものスポーツドリンク。


2人で近くにあったベンチに座った。



「あちー」と言いながらブレザーを脱いだ虎ちゃんは、シャツの袖をめくってネクタイを緩める。


筋肉の付いた男らしい腕と、汗ばんだ横顔が少しだけ男らしく見えた。



「バツゲームだけどさ」



「うん」



「授業中にカト先のヅラを取るってのは?」



「はぁ?」



カト先というのは、数学の加藤先生のこと。


去年までは髪の毛が薄かったのに、新学期に入ってから急に毛の量が倍増していて。


不自然な生え際と、作りモノの髪の毛の質に生徒たちの間ではヅラだとウワサになっている。



「却下!ムリに決まってるじゃん」



「はははっ、冗談だって。けどバスケ部の間で、いつかそれを実行するつもりだけどな。特にコジロー辺りが」



「男子って、本当にバカなことしか考えないよね」



ケラケラ笑う虎ちゃんを呆れ顔で見つめる。


なんでそんな下らないことをやりたがるんだろう。