「ど、どこ行くの?」



昇降口で靴に履き替えたあとも、虎ちゃんは手を離してくれなかった。


私の手を引いて、どこかに向かって歩いている。



「こういう時は、何も考えないでパーッと遊ぶのが1番なんだよ」


「え?私、そんな気分じゃ……」


できれば今すぐひとりになりたい。


「だからこそ行くんだろうが」


「ちょ、ちょっと虎ちゃん」


「いいから黙ってついてこいって」



そう言って連れて来られた場所は、駅前のゲーセン。


虎ちゃんは私を元気付けようとぬいぐるみやストラップを取ってくれたり、無理やりカートゲームを一緒にやらされた。



「負けた方がバツゲームな」



なんて言うから、いつの間にか私もついつい本気になっていて。


真剣にハンドルを握っていた。



「っしゃー!俺の勝ちー!」



「卑怯だよ、そこでアイテムを使うなんてー!」



「勝負の世界に卑怯もへったくれもあるかよ」


「ひどーい!少しは手加減してくれてもよくない?」


「手ェ抜いたら相手に失礼だろ」



得意げに笑う虎ちゃんに頬を膨らませる。


あそこで攻撃されなかったら、間違いなく私が勝ってたのにさ。



なんて。


さっきまで苦しくて仕方なかったのに、ホント単純だよね私って。