え。


「あ……」


待って、武富くん。


追いかけようとしたけど、武富君はすでに図書室から出て行ったあとだった。


2人は……別れたの?


ホントに?


俺といることで苦しめているのはわかってたって……どういう意味?


罪悪感から一緒にいてくれただけで、本当は柑菜は颯太のことを……って。


その続きは?


武富君……。


小説の主人公そのものって。


付き合ってても片想いだったって。


どうして?


織田さんは武富君が好きなんでしょ?


両想いだったんでしょ?


それなのに、違うの?


織田さんは……ホントは速水君のことが好きなの?



武富君のことを思うとどうしようもなくなって、涙がこぼれ落ちた。



ねぇ……武富君。


勝手かもしれないけど、やっぱり私は武富君が好きだよ。



でもね。


別れたって聞いて、ホントなら喜ぶべきことなんだろうけど苦しくて仕方ないの。


どうしてかな?



「咲彩……」



「と、虎ちゃん」



どうしてここに?


いきなり現れた虎ちゃんにビックリして目を見開く。



「遅いから探しに来た」



どこかかしこまったように、よそよそしい虎ちゃん。



「さっきあいつとすれ違ったけど……何かあったのか?」



真剣な眼差しを向けられて、とっさに目をそらす。


そして慌てて涙を拭った。



「ううん、大丈夫だよ。ごめんね」



心配させまいと、愛想笑いを浮かべる。


目……赤くなってないかな?


泣いたことがバレませんように。



「あーもー!んな顔すんなっつーの。気になって仕方なくなるだろ?行くぞ」



髪をくしゃくしゃと撫でられ、虎ちゃんに腕を掴まれる。