なんて無神経なことを聞いちゃったんだろう。
後先考えないで発言してしまったことを激しく後悔する。
サッカーが大好きだから、今でも武富君は苦しんでいるんだ。
ホントはやりたいんだよね……?
それがすごく伝わってきた。
「柑菜もきっと、こんな俺に嫌気が差したんだろうな」
え……?
泣きそうな顔で続ける武富君を見て、黙ったまま拳をギュッと握り締める。
嫌気が差したって……。
どういう、こと?
「俺たち、別れたんだ」
ーードクン
わか、れた?
うそ。
「俺といることで苦しめてるのはわかってたから、潮時だったんだよ」
フッと自嘲気味に笑う武富君。
とても寂しそうなその横顔からは、今でも織田さんを想う気持ちが伝わって来る。
なんて言ってあげたらいいのかわからなくて、ただ胸が苦しかった。
「前に貸した恋愛小説の内容覚えてる?」
幼なじみに片想いをしてる男の子の話だよね。
武富君の目を見ながら、うんと小さく頷いた。
「主人公の男はさ、まさに俺そのものだよ。付き合ってても、いつも俺の片想いだった。罪悪感で一緒にいてくれただけで、本当は柑菜は……颯太のことがーー」
そこまで言って武富君は黙り込んだ。
「ううん、やっぱりなんでもない。変なこと言ってごめん。じゃあな」