「お前、いっつも本読んでんなー。そんなに面白い?」
無邪気に隣の席の武富君の顔を覗き込む虎ちゃん。
こんな時ばかりは、人見知りせずに誰にでもガンガン話しかけて行く虎ちゃんに感謝だよ。
ドキドキワクワクしながら、返事が気になって聞き耳を立てた。
こんなのストーカーみたいだけど。
でもでも、何を読んでるか気になるよ。
「推理小説だよ。面白いから末永も読んでみる?」
「いっやー、俺は活字が苦手だから。推理小説って夢に出て来そうで怖いし。それに、血とかグロいのも苦手なんだよなー。よくそんなん読めるよな」
「もったいない。ナゾが解けて行くのが楽しいのに」
武富君は全力否定する虎ちゃんにクスッと頬を綻ばせた。
自分の好きな物を否定されても嫌な顔ひとつせず、物腰が柔らかくて爽やかな武富君。
ヤバい、カッコ良い。
私に対してのものじゃないけど、たまに見せてくれるその笑顔は反則だよ。
胸がキュンと疼いて、ドキドキが加速する。