「名前は…」

言いたくない気持ちもあった。

もし、心也だとしたら…

きっと気まずい雰囲気になるだろうから。


ビンタで、終わった私達の関係。

「七瀬…愛莉、です」

目を見てまっすぐ言う。

「え…?

あい、り?」

やっぱり、心也だったか。

「久しぶりだね。苗字…変わったんだ」

突っ込んじゃいけない事情にも、突っ込みたくなる私。

なぜか、緊張してる。


「愛莉だとは…思わなかった」

そう笑って言った。

花那と…上手くいってるのかな…?

「お前、誰かと付き合ってんの?」

うん、聞きたくなるよね、

いないよ…なんて言ったら、

『俺と付き合わね?』

とか言ってくるんだろうな。

平気な顔して、

照れる時、よく私に見せた顔をして。


「いないよ」


だけど、恐れるのは嫌だった。

「そっか、てっきりあいつと付き合ってんると思ったよ」


そのアイツって…誰の事だろう?

「え、?お前、幼なじみ覚えてねーの?」

「えっ!晴人のこと言ってたの?」

私の幼なじみ、

鹿野晴人は、心也と仲が良かった。

今は、高校が違うけど

中学までは一緒で。

よく3人で、登校した。

「まさか、違う高校いくとはね…」

「理由分かるの?」


私には、教えてくれなかった。

「ごめん、俺もよくわかんねぇ」


「そう…」