「えぇーっ」

「拒否権ねぇーから」

そう言って、少しずつ顔が近づいてくる。

あと、10センチ

…5センチ

5センチのところで止まって、目を開けると私と山崎君の顔の間は、0センチになった。

その触れ方が、優しい。

おでことおでこが当たる。

間近で見られてる今、私は戸惑う。

俯きたいのに俯けなくて。

ちっ、悔しいぞ。

「愛莉は、俺の何になりたいの?」

なんて質問をしてくる。

「私が答えなきゃダメですか?」

「もちろん」

そう、ですか。

これは、言わないと怒られるパターンですかね。

これまた、悔しいぞ。

息を呑む。

「山崎君…の、か、かの…」

思ってる事と真逆な緊張感なんですけど。

「彼女になりたいです」

と言えばいいことを。

「かの、じょ、になりた…」

ブーッブーッブッー!

言いかけた瞬間、私の携帯がなった。

その音と同時に、さっきしてきた事がよみがえり、急に恥ずかしくなる。

山崎君もそうだったのか、私からだいぶ離れたところで、片手で顔を隠してる。

だけど、隠れてなんかいない。

逆に、丸見え?

「ご、ご、ごめん!」

着信は今でもなってる。

って事は、電話。

「茉香だ。」

夜にどうしたんだろう。